みなみのしま


今日、伊達さんの試合を一歩と見に来た。
さすがチャンピオンというだけあって、物凄い人の入りで。
私達ははぐれてしまった。

いつも、『はぐれたらお互い勝手に帰る。』と約束してるので。
私は気にする事なく駅へと向かう事にした。

「すいません、困ってます、とても困ってマス!」

その時、そう言っていきなり腕を掴まれた。
思わず掴まれた腕をひねって肘鉄をかます私。

「キサマーーー!!!新手のスタンド使いか!!!」

「ぐふっ・・・」

振返ったら外国人が涙目になっていた。

「あ・・・ご、ごめんなさい。痴漢かと思ってつい・・・。」

「い、いえ、ダイジョウブです・・・。(スタンドツカイ??)」

青年はそう言ってわき腹をさする。
こころなしか顔色が悪い。
ところで・・・

「もしかして、ヴォルグさん?」

この外人には見覚えがあった。

「え・・・ドウシテ・・・ボクのこと知ってる?」

そしてやっぱり当たっていた。

「えーと、幕之内一歩知ってるでしょ?
彼の身内というか、姉みたいなもので・・・。」
「幕之内の、お姉さんですか。」
「まぁ、そんな感じで良いや。で?どうしたの?」
「えっと・・・試合終わって、人いっぱい。
一緒に来た人居ない。帰るため駅行きたい。でも、道分からない。」

どうやら迷子らしい。


プロローグ〜stray wolf〜


そんな迷える子羊(彼の場合狼か?)を従え。
は人混みをかきわけ駅へと歩く。

「あなた、凄い。たくさん人居るのによく歩ける。」
「自分のペースを人に乱されるのが嫌なだけよ。要するに自己中なのだ!」
はそう言って笑う。
ヴォルグは微笑むと、首を振った。
「それ嘘。あなた、ボク歩きやすい様、道作ってくれている。」
「!」
「あなた、優しい人。あなたに声かけてよかった。」
そう言ってヴォルグはまた微笑んだ。
・・・としては、とても調子の狂う人だった。
「え、と・・・あは!そんなに褒められると照れる。」
はそう言って笑った。
ヴォルグは『本当の事です。』と言ってに礼を言った。

***

「・・・ねぇ、ひとつ聞いてもいいかな。」
「ハイ、なんでしょう?」

「キミは、どうしてそんなに悲しそうに笑うの?」

「え・・・」
ヴォルグは声を詰まらせた。
「ずっとそう。笑ってるけど、どこか寂しそうで。
話していても、心ここにあらずというか・・・。」
「・・・そう、ですか?」
「うん。とても分かりやすい。」
「・・・・・・」
ヴォルグは黙って下を向いてしまった。
は『しまった!』と思い慌ててヴォルグの腕を掴む。
「ご、ごめん。誤解しないで、つまんないとか、そういうんじゃないんだよ。
ただ、心配っていうか、ここはヴォルグにとって外国で。
友達も家族も居ないし、何か不安とか悩みあんのかなーと思って。」
「ありがとう、心配してくれて、とても嬉しい。」
「ほんとごめんね、何か地雷踏んだみたいで・・・」
「ジライ?」
「あ、ううん、こっちの話。」
「・・・ボク、祖国に母一人残して来ました。」
「お母さん?」
「はい。ボクの祖国とても寒い国。
母はボクのために頑張って、病気になってしまった。
だからボクは、この国来た。少しでも、母に楽させるため。」
「・・・お母さん、元気になるといいね。」
「はい。あなたも、ご両親大事にしてください。」
ヴォルグのその言葉に、今度はがピクリと肩を反応させる。
「・・・どうしました??」
「いないんだ。」
「・・・イナイ?」
「うん、お母さんもお父さんも。事故でちぃちゃい頃・・・死んじゃった。」
「あ・・・ごめんなさい、ボク知らなかった・・・」
「いいよ、もう本当に、10年以上昔の事だから。」
「そんなに・・・」
「まね、ヴォルグはママ大切にしてあげなよ!」
はそう言ってヴォルグの肩をバシッと叩いた。
ヴォルグは笑って「モチロンです!」と答えた。
「・・・やっと笑ってくれたね。」
「あはは・・・あなたのおかげ。あなたと話すと、元気になる。」
「そいつぁよかった。」
「でも・・・じゃぁ、幕之内一歩は・・・親が居ないのですか?」
「や、えーと、なんつーか・・・私は一歩の本当の姉ではなくて。
姉のような存在で。一歩の家には・・・ホームステイ?みたいな。」
「おお!なるほど、理解しました!」
「おう、それはよかった。」

ほどなくして、駅に到着した。

「よかった!駅です!!」
「いやぁ、無事たどり着いて良かったよ。」
「ありがとうございます!助かりました!!
・・・えーと・・・そう言えばボク、名前聞いてませんでした。」
よ。。はいコレ。」
そう言っては財布から名刺を取り出した。
・・・覚えておきます。今日はありがとう!」
「いーって事よ!気をつけて帰れよ!」
はそう言ってヴォルグに手を振って、立ち去った。
ヴォルグも、手を振りを見送る。


「・・・あ・・・。」

そこで、ある事に気が付く。

「ボク・・・漢字読めません・・・。」

そして物語は一歩へと続くのであった。


++++あとがき++++

うん、久々の夢更新はプロローグでヴォルグですね。
やー、可愛かってんもん!道に迷うヴォルグ。
思わず書きたくなったんだけど。
ヒロインは相変わらず統一したいので、プロローグから。
今度の更新はヴォルグ夢も考えてますが。
一歩君とクミちゃんの後楽園デートを尾行する話とか。
そこで間柴とタッグ組んでみたいんです。
ある意味ダブルデートですね。凶悪ですね。
ちなみに「新手のスタンド使いか!」は渡り鳥の口癖(・ω・)

2008/3/24