みなみのしま


「ピュー、ピューピュー。おいで、ほら。」

外に出ると、数メートル先に3匹の子猫がおった。


プロローグ〜虎と子猫と小ぃさな鈴〜


姫さんが口笛を吹く。
子猫はそれを合図に姿を表すみたいやった。

「小さいなぁ、まだ生後数週間やな。」
「いつもね、8時か9時くらいにコレあげてるの。」
姫さんがポケットから出したのは、猫の缶詰だった。
「でも、全然近くに来てくれなくて。いつも置いて帰るんだ。」
「さよか・・・よーし、ワイも協力したるわ。」

そう言ってワイはと同じようにしゃがみ込む。
猫から見ればワイら人間は巨人やからな。
少しでも小さなってやらんと、怖がってまう。

「チューチュー、チュチュー」
「おお、すごい、ネズミのマネ!?」
「せや。姫さんもやってみぃ。」
「・・・ちゅー・・・ちゅちゅちゅー・・・おお!ネコが少しこっち来た!」
「ははっ、でもえらいおもろい顔しとったで姫さん。」
「うわ、ひっどー。」
「後はおいで、おいでって優しく言うたれば大丈夫やでな。」
「ホント?・・・おいで〜、おいでおいで!」

姫さんは手を叩いてみたり、猫缶の音を立てたりする。
すると、1匹のネコが近づいてきた。
「来たよ!武士どうしよう・・・。」
「缶あけたりや。」
「う、うん・・・」
姫さんは缶を開けると少し自分より遠くにそれを置いた。
子猫はそれに警戒しながら近づき、
安全だと分かったのか、缶の中に顔をつっこんだ。

「あ、食べた♪」

姫さんは笑顔になった。
「良かったなぁ姫さん。」
「うん、嬉しい・・・。」

姫さんは両手を頬に当てて、とても幸せそうな顔で子猫を見つめていた。
・・・あかん・・・その顔は反則やで姫さん・・・

「にゃぁ」
「あ・・・」

そのとき、猫は缶詰から離れこちらにやってきた。

「にゃぁ・・・にゃぁ・・・」

鳴きながら、姫さんの手のひらや足に体をこすりつける。
甘えてるみたいや。

「姫さんの事、信頼したみたいやで?」
「ほんと?わぁ、嬉しい・・・」
姫さんはそう言ってネコの背中を撫でる。
「抱っこしたったらええよ。」
「・・・・・・」
「どしたん?怖いんか??」
「ううん、私、猫だっこした事ないの。」
「さよか、ほんなら見本みせたるわ。よく見とき。」

ワイはそう言って、姫さんに撫でられて気持ちよさそうなネコを抱きかかえる。

「わ、武士凄いね。」
「ワイは家で猫飼ってるねん。ほら、手出しや。」
「あ、うん・・・あは♪」
姫さんはワイが教えたとおり、猫を抱いた。
猫も心なしか気持ちよさそうやった。

「なぁ、名前付けたらへん?」
「え?」
「コイツの名前や。姫さん。」
「名前か・・・そうだね、つけてあげよう!うーん・・・。」

姫さんはそう言って少し悩む。

「うーん、お前黒と白のブチやからなぁ、
そのまんまブチとかはどや?」
「にゃぁ」

ぬぅ、にゃぁと言われても猫語はわからへんわ・・・。

「ニケにしようよ。」
姫さんが口を開いた。
「ニケ?何でや??」
「ギリシア神話に登場する勝利の女神の名前がニケって言うの。
ほら、よく言うでしょ?『勝利の女神はどちらの微笑むのか?』みたいな。」
「ほー、えらいカッコええ名前やな。
よっしゃ!ええで、じゃぁ今日からコイツはニケや。」
「うん!ニケ、よろしくね!」
「にゃぁ〜」
「・・・せや!」
ワイはポケットから家の鍵を取り出す。
「どうしたの?」
「しっかりとニケ抱えててや。」
「ん?」
家の鍵にくっついている小さな鈴を取り外し、
ニケの首に結びつける。
「わぁ、首輪だ!」
「せや。それでニケが居たらすぐ分かるやろ?」
「うん、ありがとう武士!よかったねぇニケ!」

にゃぁ、と鳴くと。ニケの首で鈴がチリンと音を立てる。
ま、の嬉しそうな顔見れたから。
ワイはそれで十分満足やよって。


++++あとがき++++

英語ではナイキといいますそうです。
エア・●アに書いてありました。
何かよさそうな名前ないかなーと思って思い出したのがニケだった。
そのうち千堂の話にニケの意味とかからめて行くお(・3・)

2008/04/08