みなみのしま

「あのねぇ、さん。」
「はい。」
「今度ねぇ、この土地売る事になったのよ。」
「え?」
「ほら、この家もうボロボロだし、家族で田舎に引っ越す事になったから。
土地売却して、田舎の家を新築する事にしたのよ。」
「ちょ、えっと・・・」
「来月の頭取り壊しだから、この1ヶ月の間に新しい家みつけといてね。」
「・・・はい。」

私、は最大の危機に直面しています。
施設を卒業して以来、住み慣れた我が家から追い出されてしまいます。

プロローグ〜姉と弟〜

「・・・部屋探しねぇ・・・」
あれから既に1週間経った。
正直今更する気がおきねぇ・・・というのが現状。
私が住んでいたアパートは、木造だったがそれなりにいい物件だった。
築28年。家賃4万4000円、風呂トイレ別。南向き。
1DKの2階建てで、1階にダイニングキッチン、2階に洋室がある。
駅から遠いが、静かな住宅街なので過ごしやすい。

「どーすっかなぁ・・・・」
お世話になった施設に居候というのも無くはナイ・・・。
掃除とか手伝いしてれば多分置いてくれるだろう。
金銭的に援助もしていることだし。

そんな事を思いながら、歩いていると。後ろから声をかけられた。

さん?」

聞きなれた声だ。
「ん?・・・一歩!何でこんな所にいるのよさ!」
「あ、えっと・・・僕は・・・」
「・・・どうした?」
私は一歩の様子がおかしい事に気付いた。
よく見ると、目が腫れている。
「何かあったのか?」
「・・・・・・はい。」
「話せるか?」
そう聞くと、一歩はこくりと頷いた。
「・・・実は・・・――――」





「なるほど・・・。ま、倒れただけならよかったよ。」
「はい・・・。」
一部始終を聞き終えた私は、一歩を元気付けるためにご飯へ誘った。
しかし、彼はそれを断った。
「今から帰って、夜釣りの準備とかしなきゃいけないんです。
だから、また今度誘ってください。」
「そっか・・・大変だね。」
「いえ、母さんがいつもやってたことだし。」
一歩はそう言って笑った。

・・・!

私はひらめいた。
我ながらとてつもなく素晴らしい考えだ!!

「一歩!!」

私は思わず一歩の両肩をがしっと掴む。
「いーっこと考えた!!」
「え!?」
「私を一歩の家に居候させてください!このとーり!!」
「・・・え??」
「私さ、住んでるアパートが土地売却で追い出されるんだ。
自分に合った条件の新しい家探すのも大変でしょ?
お母さんが居ない分私が働く!
こうみえても重労働得意だし!!
あ、お給料は要らないから。宿とご飯だけ食べさせてもらえれば。
ご飯私が作ってもいいし。だからお願い!
居候させてください!どうかこのとーり!!」
「え、えーっと・・・」
「今から夜釣りの準備なんだよね?私も手伝う。
だから、一歩が私の働きを見て合格だと思ったら家に置いて。
ダメだったら諦めるから。お願い!!」
「わ、わかりました!・・・でも、本当にいいんですか?」
「もちろん、困ったときはお互い様!何でも手伝うから!」

「あ・・・ありがとうございます!!」

一歩は嬉しそうに私に頭を下げた。


++++あとがき++++

居候生活のはじまりですね。(・ω・)

2008/3/8