みなみのしま


「あのさ、もうちょっと楽しそうな顔できない?」

と間柴は腕を組み、恋人同士のフリをして一歩達を尾行していた。
2人とも、先ほどの単独行動よりはよっぽど自然だが・・・。


プロローグ〜似たもの同士〜


「設定上私達はデートで来てるんだから。お前はもっと周囲に溶け込め。」
「大根役者で悪かったな。」

間柴の顔は遊園地とはまったくかけはなれていた。
獲物を狙うハンターの様なまなざしを一歩に向けている。
とうの一歩達は、昼食タイムらしく現在食べ物の屋台の前に居る。

「あ、座った。」
「行くぞ。」

2人が席についたのをのを確認すると、間柴はスタスタと歩き出す。

「あ、ちょっと!ちゃんとエスコートしなさいよ!!」

は小走りで間柴の後を追った。

「さっきパン食べたからなー。あんまお腹空いてないんだけど。」
「オレは席に居るからな。適当なもん買って来い。」
そう言って間柴はに財布を投げる。
「わととっ・・・え?ちょっと、そんな・・・おい!!」
ご飯をご馳走してくれるらしいのはありがたいが・・・
「まったく、あいつはデートというものをぜんっぜん分かってないな。
あ、すいませんタコヤキを2つ下さい。マヨネーズ多めで。」
はプンスカしながらタコヤキを頼む。

「買ってきたぞ間柴了。」
「遅い。あいつらはもう食べ終わるぞ。」
「うーわなにそれ、うーわ。ちゃん落ち込んじゃうよ。
せっかく間柴了のために買ってきたのに・・・むぐっ。」
「静かにしろ。」
そう言って間柴はの口を押さえて一歩達に背を向ける。

「・・・?・・・今、さんの声がしたような・・・」
「え?そうですか?・・・私には聞こえませんでしたけど・・・。
さんも誰かとデートだったりして!」
「あはは、そうかもしれませんね。」

2人のそんな声が聞こえる。
「危うくバレる所だったぜ。」
「・・・んーんん。(さーせん)」

間柴はの口を開放してやると、すぐさま歩き出した。
見ると、一歩達の姿はすでに間柴の前を歩いていた。
「せっかちなヤツだ。」
もいそいそとその後を追う。
一歩と久美が向かったのはお化け屋敷だった。

「キャー!」
「だ、大丈夫ですから、全部作り物ですから!!」

一歩と久美は、順調にお化け屋敷を堪能していた。
そして一方、間柴との方は・・・

「ぎゃぁあぁあぁ!!!」

ばこすっ

「はっ、しまった!」
「弁償だな。」

ちょうちんお化けの息の根を止めたところだった。

「だってびっくりしたんだもん。」
・・・お前はもう少し女らしくできねぇのか。久美を見習え。」
「(シスコンめ。)人には個性というものがあるんだよ間柴了。
・・・でもまぁ、周囲に溶け込むためにそれも必要か。」
はそう言って間柴の腕に自分の腕を絡める。
「きゃー!怖い!速く行こうよ了!」
「・・・・・・・・・うっ・・・。」
「何だ!『うっ』て何だ!!口元を手で覆うな!!」
「いや・・・オレが間違っていた。お前はお前の個性を尊重しろ。」
「そうか、ようやっと私のすばらしさが・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・ちょっと待てそれはどういう意味だ!!!!」

***

「幕之内の野郎・・・鼻の下伸ばしやがって・・・」
「いいじゃない久美ちゃんも楽しそうだよ?」
「気にいらねぇな・・・よし。」
「?」

間柴は一歩と久美が曲がり角を曲がるのを確認すると、
すぐに追いかけ、その角で止まった。
そして・・・

かりかりかりかりかり

壁を爪でひっかき始めた。
「?」
はわけがわからなかったが。
数秒後。
「うわああああああああああ!!!」
という一歩の断末魔のような悲鳴が聞こえ。
すぐに
「置いてかないでくださーーーい!!」
という久美の悲鳴が聞こえる。

「ちょっとーー!!お前なにしてんのーーー!!」
「見ろ。幕之内のヤツ、久美を置き去りにしやがった。」
「いやいやいや!明らかにお前悪いじゃん!」
「フン・・・ちょいと脅かしてやっただけでこのザマだ。」

満足そうな間柴の笑みに、はため息をついた。
「まったく・・・。一歩大丈夫かなぁ・・・。」

***

その後、一通りの乗り物を楽しんだ一歩と久美。
2人は後楽園を後にして、それぞれ帰宅の途についた。
そしてその後を追って図らずしもデート的な物をした2人は、
一歩と久美が手を振って別れるのを確認し、帰ることにした。

「いやぁ〜、面白かったな間柴了!」
「そうか?」
「そうだよ!」
「用は済んだ。オレは帰るぜ。」
「最後まで自由奔放だなお前は・・・そんなお前にプレゼントだ!」
は財布から1枚の紙を取り出し、間柴に渡す。
「?・・・なんだ?」
「私の連絡先。まぁ、何かあったら連絡ちょうだいみたいな。」
「・・・気が向いたらな。」
間柴はそう言って名刺をポケットにしまう。
そしてそのまま、踵をかえすと、無言で歩き出す。

「またデートしようなー!」

がそう言うと、間柴は片手を軽く挙げ、改札の中に消えた。

++++あとがき++++

間柴は本当にイイキャラですね。
ニコ動では間柴様大人気ですから。
にとって間柴は良き友達です。
間柴にとってのは良き理解者です。

2008/04/08