「お疲れ様でーす。」
練習を終え、鴨川ジムの扉を開ける。
「よっす!」
「えっ・・・さん!」
外には、何故かが立っていた。
一歩のセリフに、ひそかに鷹村達が反応する。
「どうしてココが?」
「この前ご飯食べた時、教えてくれたじゃないのさ。」
「あ・・・そっか・・・。」
「何だ、彼女のお迎えか?」
「違いますよ!僕と一緒に居る女の子は皆彼女扱いですか!?」
「だって、めずらしいから。」
「だって、いじめられっこだから。」
「・・・・・・・・・。」
一歩は無言で肩を落とす。
「じゃぁあれか、お姉ちゃんか?」
「それも違います。
この人は、この前話してたプロレスラーのさんですよ。」
「ども、はじめまして。です。」
ぺこりと頭を下げる。
あぁ!と3人は納得する。
「俺様は鷹村守。一歩やコイツラの大大大先輩だ!」
鷹村はそう言って青木と木村の肩に腕を回す。
「俺は青木。青木勝だ。」
「俺は木村達也コイツ(青木)とは高校からの腐れ縁で一緒にボクシングはじめた。
ま、よろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしく。」
「一歩と同じ歳なのか?」
「いいえ、2コ上の18歳です。」
「なんだ、俺らと同い年か。」
木村が青木と顔を見合わせた。
「そうだ、今日来た用事なんだけど。」
そう言ってはごそごそとカバンの中を漁る。
「はい、これ試合のチケット。」
「あ、わざわざありがとうございます!!」
一歩に茶色い封筒を渡す。
「鷹村さん達はご存知だと思うんだけど。会場は後楽園ホールね。」
「後楽園ホールかぁ・・・。」
一歩はまだ、知らない世界だった。
プロのボクサーなら一度は立つ、後楽園ホールの大舞台。
自分が立つわけではないが、考えるだけで一歩はドキドキした。
「おう!俺様たちも見に行くからな!」
「頑張れよ、ちゃん!」
「お待ちしてまーす!じゃ、一歩もトレーニングがんばって。」
「はい!ありがとうございました!おやすみなさい!」
「おやすみなさい!」
********
当日。
後楽園ホールはかなりの熱気に包まれていた。
「うわぁ、凄い・・・・」
「さすが、花形レスラーは伊達じゃねーな。」
「見ろよ、あそこの横断幕・・・」
「最早オタクとかのレベルだぜ・・・」
の人気というか、オタクの熱気に若干怖ささえ覚える木村と青木だった。
そして試合が開始する。
ホールが暗くなると、観客の『ワー』と言う声と盛大な拍手の嵐が始まった。
そして司会の高らかな声がホールに響く。
「今宵、この後楽園ホールに舞い降りるのは!?
夜叉か!?それとも女神か!?いいや違う!
我らが堕天使ZERO!!降臨んんんんん!!!!」
更に高くなる歓声の中、スポットライトが選手を捉える。
黒いマスクに覆われた顔。
ゆらゆらとゆれる長い髪。
しなやかな肢体を包むのは、マスク同様黒を基調にした衣装。
「そのダイナマイトバディで今日は一体何人の男を魅了するんだあああああ!!!」
司会の解説に、沸き立つ会場。
一歩は、ごくりとつばを飲み込んだ。
そして、相手の選手もリングに上がり、試合が開始する。
*****
「・・・すごかったなぁ〜・・・・」
「あぁ、凄かった。」
「ありゃ・・・なんつーか・・・芸術だな。」
試合終了後。全員のプロレスに完膚なきまでに魅了されていた。
「こう、なんだ?足で頭挟んで投げるやつ!すっげー爽快だった!」
「僕は相手の肩に飛び乗って、足の間通って一回転するやつ!
すっごくかっこよかったなぁ〜!!」
4人は興奮さめやらぬ中。
ある場所に向かっていた。
そこは関係者しか入れない特別な場所。
「さーん!お疲れさまです!!」
「一歩!」
ZEROの控え室である。
「お疲れ様です!」
「来てくれてありがとうございます、みなさん!」
「こっちこそ、招待してくれてありがとよ!これ差し入れだ。」
鷹村がそう言って紙袋を差し出す。
「うわぁ!ありがとうございます!!」
「おい、あんなのいつの間に持ってたんだ??」
「知らん。チクショー、俺らも何か買ってくれば・・・。」
ぼそぼそと青木と木村が話す。
「試合凄かったです!僕もう見入っちゃって!息できなかったです!!
かっこよかったですよー!さん!!」
一歩が目を輝かせてに迫る。
「嬉しいなぁ、そんな褒められたの生まれて初めてだよ。」
「本当ですよ!ね!木村さん!」
「あぁ、驚いたぜ。あんなスピーディーでパワフルなトリック出せるなんてな。
ほい、勝利のお祝いだぜ。」
そう言って木村はどこからともなく花束を出して、に渡す。
「ありがとうございます。」
「てめ木村アアアアアア!!!裏切り者!!」
そして青木の悲痛な叫びが響いた。
「また見に来てね!」
はにっこり微笑むとそう言った。
++++あとがき++++
とりあえず、現在の馴れ初めはひと段落。
これが根底にあって、その上に宮田とのプロローグがあって。
他の話が進行していきますね。
2008/2/4