木村達也はその日、たまたまそのファミレスの前を通った。
何の気無しに、ファミレスに目を向けると・・・。
「・・・あん?・・・ありゃ確か・・・」
窓際の席に。最近入門してきた噂の幕之内一歩が居た。
そして、同じ席で楽しそうに話している美少女の姿も確認する。
「・・・はっはーん。」
木村はいやらしい笑みを浮かべ、その場を後にする。
***
次の日。
「こんにちはーっ!」
「おお、来たな。」
ジムに入門して、2ヶ月弱。
一歩の存在も定着してきたようだ。
「お疲れ様です、鷹村さん。」
「いやぁ、一歩くんおはよう。」
にやにやと笑う鷹村に悪寒さえ覚える一歩。間違いない、この人何か企んでる。
「キミ昨日駅前のファミレスに居たよね?」
「・・・なんでですか・・・。」
「木村がさぁ、見たんだよキミの事。
なんでも、美少女と楽しそうにお食事していたそうじゃぁないか。」
「ええ、まぁ・・・ご飯は食べてましたけど・・・。」
「彼女とデートか?」
木村がちゃちゃを入れる。
「ち、違います!彼女とかそういうんじゃ無くって・・・」
「じゃー何なんだあの娘はーーー!!!!」
ギリギリと腕で首を締め付ける鷹村。
「いだだだだだだ!!は、離してください!鷹村さん!!」
・
・
・
「なるほど、お財布のお礼でね。」
「そうですよ。イタタタ・・・。」
首をさする一歩。
彼の首回りは地味に赤くなっている。
「よし!その試合俺様も見に行こう!!」
「え?」
「どーせお前にゃ誘う友達も居ないんだろ?
俺様が行ってやる。おい木村!青木!!お前らも来い!」
「ま、タダなら良いですけど・・・。」
「面白そうじゃねーか、女子プロレスかー。」
「つーわけだ。4枚もらっとけ!一歩!!」
鷹村は一歩の背中をバシッと叩く。
その瞬間、一歩は嬉しくなった。
そっか・・・一人じゃないんだ・・・。
鷹村さんが一緒に来てくれる・・・木村さんも、青木さんも・・・。
「はい!わかりましたっ!!!」
***
「・・・♪・・♪♪・・・」
「おや?何だか嬉しそうだね一歩。」
に電話をするために、廊下をとてとてと歩いていた一歩。
どこか嬉しそうな息子の様子に、母はすぐに気付いた。
「うん、今度ジムの先輩と女子プロレスの試合見に行く事になったんだ。」
「へぇ〜、それって、この前あんたがお財布届けてあげたっていう女の子の?」
「そうそう。」
「そうかい、勝つといいねぇ。」
「うん!」
トゥルルルルルル
電子音が響く。
『・・・はい、です。』
「あっ、こんばんわ。幕之内です。」
『あぁ、幕之内君。こんばんわ。』
「あの、今度のさんの試合なんですけど。
チケット4枚いただけますか?」
『4枚ね・・・うん。おっけー!』
「はい、あと、お願いがあるんですけど・・・」
『ん?なぁに?』
「そのー・・・チケットの1枚にサインをしていただきたいなー・・・とか・・・。」
言うまでもないが、これは鷹村のオーダーである。
「一歩!チケットにサインしてもらえ!!」
「・・・一応頼んでみます・・・。」
「・・・む、無理ですよねっ!さんみたいな売れっ子の花形レスラーが
そんな易々とサインできないですよねっ!!」
『ううん、サインくらいどうってこと無いよ。
どーせボクシングジムの先輩から頼まれたんでしょ?
4枚ともしといてあげるから。安心して!』
「ほ、ホントですか!うわぁ〜!ありがとうございます!!」
『あ、ところで幕之内君。』
「はい?」
『あのさ、さんって・・・呼ばれなれないし、かたっくるしいから。
これからはでいいよ?』
「えっ、でも、僕よりも年上なのに、そんな名前で呼ぶなんて・・・。」
『じゃぁ、私も一歩って呼ぶからさ。ね?これでどう?』
「ん〜〜〜、、、年上の人を呼び捨てにするのはなぁ・・・
さん、じゃ駄目ですか?」
『おっけー、じゃぁ今日からそういうカンジで!』
「はい、よろしくお願いします!・・・えと・・・さん。」
『うん。一歩が来てくれるの待ってるから。』
「は、はい!それじゃ、おやすみなさい!」
チン----
++++あとがき++++
もはやバレバレかと思いますが私は木村が大好きです。
2008/2/4