みなみのしま

よく見かける女性だった。

ランニングしていると、すれ違ったり。
公園で腹筋していたり。
鉄棒で懸垂しているときもあった。

「こんにちは。」

はじめて声を掛けられたのは中学3年の終わりの頃だった。

「・・・こんにちは。」

すれ違いざまに。それだけ。

それから何度か。
すれ違うときに挨拶をした。

半年くらいたった頃。

「・・・。」
ランニングしていた俺の横を誰かが走りぬけた。
それはいつも挨拶をしていた女性で。
振返って、俺を見ると笑った。
なんとなく、それが悔しくて。
俺はペースを少し上げて、女性を抜かした。
すると女性も少しペースを上げて、俺を抜かす。
何度かその繰り返しをすると、いつの間にか全速力になっていた。
「負けないわよ!」
「俺だって。」

しばらくそんな感じで走り続け、次第に息が荒くなると。
「息が荒いよ、キミ。」
「アンタだって。」
と言ってまた走るのを繰り返す。

その後、2人とも体力を消耗しきって地面に手を付いた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・みづーーーー・・・・」
「・・・っはぁ・・・おれ・・・買ってきますよ。」
そう言って俺が立つと、女性も立ち上がった。
「私も行く・・・負けないんだから。」
その言葉に、俺は噴出した。
「ぷっ・・・・あはははははっ!」
「何よ。」
「別に、どこまで負けず嫌いなんだろうと思って。」
「それはこっちのセリフ。」
女性はそう言って歩き出す。
俺もすぐ歩き出した。
「アンタ、名前なんていうの?」
「私は・・・、よろしくね。キミは?」
「宮田一郎。高校1年。」
「1年?じゃぁ、私の2コ下か。」
「うわ、マジで?俺よりお姉さんなの?」
「どういう意味よ!?」
そんな話をしながら、俺たちは公園のベンチでジュースを飲んだ。
「あ、そろそろジム戻らないと。じゃ、またね!!」
彼女はそう言ってまた走り去っていった。
「・・・ジムか・・・なんかのスポーツ選手かな。」
ま、今度聞いてみればいいかと思い。
俺は空き缶をゴミ箱に投げ捨てて再び走り始めた。


++++あとがき++++

宮田とヒロインはもっと前から知り合いです。
一歩達より2年も前から。
そして、それだけヒロインが好きです。

2008/3/3