「仏花くれ。」
「・・・なんだその敬いの欠片も無い言い方は。」
「それは達也だからさ!」
「へいへい。」
俺は目の前の客――のご注文通りに花束をこしらえる。
注文が仏花ってなんだよ・・・と思いそう言えば今日からお盆だと思い出す。
「墓参りか?」
「そうさ。ダディーとマムに備えるんだ。美しく頼むよ!」
はそう言ってバシバシと俺の肩を叩いた。
「任せとけって。」
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「ほれ。」
「ありがとう達也。」
「なぁ、こっから近いんだろ?送ってやるよ。」
「こう暑いと歩くのも大変だろうからな。」
「恩に着ます達也さま!」
手のひらをぱちんとあわせて頭を下げる。
俺はその頭をぽんぽんと叩くと車のキーを取りに一度部屋へ戻った。
車に乗る事20分程。
の両親が眠る霊園に到着した。
「ありがとう。」
「気にすんな。」
俺たちは車を降りて、霊園の奥へ向かう。
しん・・・と静まり返った霊園にはセミの鳴き声だけが大きく響く。
とても異質なものだった。
「達也、こっち。」
に手を引張られ、我に返る。
少しすると『家之墓』と書かれた墓石の前では止まった。
枯れた花が力なく垂れている。
それらを綺麗に掃除する。
「・・・水汲んでくるぜ。」
「うん。」
俺はが毎年一人でこんな事をしてるのかと思うと居た堪れない気持ちになった。
手桶と柄杓を持って、古びた水道の蛇口をひねる。
水道の横に生えている木が、小さな木陰を作り、多少暑さを和らげる。
セミの声がうっとうしかった。
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「ごめんね、手伝わせちゃって。」
「いいって。」
俺は手桶をの両親の墓前に置く。
は一生懸命に草むしりやゴミ拾いをしていた。
「よし、綺麗にしますか。」
はお墓石を綺麗にしはじめる。
「ゴミ、捨ててきてやるよ。」
「あ、いいよ。自分でやるから!」
「お前は掃除してろって。ゴミ捨ては誰でも出来るが、掃除はお前しか出来ないんだ。」
俺は有無を言わさず落ち葉や雑草などのゴミが入った袋を持って、
ゴミ捨てに向かう。
静寂の中。ジャリジャリ言うと石の音がとても大きく感じた。
戻ってくると、花差しには俺が包んだ花が差してあった。
「どうだ?綺麗になったか?」
「うん。とっても。」
微笑んで、小さく頷く。
さっき、「仏花くれ!」と花を買いに来た時のような元気は無い。
は「ふぅ・・・」と一息つくと、カバンから供え物らしい箱を取り出して墓石の前に置く。
そして、線香を取り出して火をつけた。
「あ、数珠!」
「バーカ、俺だって常識はあるよ。ホレ。」
俺はポケットから数珠を取り出す。
「さっすが達也さま!」
俺に心配させないための空元気なのか、気丈に振舞うを見るのは、俺も辛かった。
俺たちは墓前で合掌する。
はじめまして。木村達也と申します。
さんとは、友達と言うか・・・仲良くさせてもらってます。
俺なんかが言うのも変ですが。
とてもいい子に育ってると思います。
稼ぎもあって、お世話になった施設に寄付とかもしてるし。
俺なんか足元に及ばないくらい孝行娘です。
きっと幸せになると思います。
だから、心配しないで下さい。
よくわからないが。
俺はの両親にそんな報告をした。
俺が目を開けると、は既に目を開け、墓石を見つめていた。
「・・・行くか?」
「うん。」
は「またね。」と言って墓石に背を向けた。
俺は軽く会釈しての後を追う。
「ごめんね、達也巻き込んじゃって。」
「いいって。一人じゃ大変だったろう?」
「もう6年もやってるから慣れてるよ。」
そう言ってシニカルに笑う。
「・・・来年からは一緒に行ってやるよ。」
「えー、いいよそんな。迷惑だし。」
「いーんだよ!がナイショにしてる事とかも俺がちゃんと両親に報告してやる。
例えば『一歩の家に下宿してます。』とか!」
「うっわ、なにそのモーレツなありがた迷惑っ!!」
「お前の父さん怒るぜー?一人娘が男の子んち出入りしてんだからな!」
「ほっとけぃ!」
はそう言って俺の背中をバシッと叩いた。
別に。
好きになってくれとは思わない。
こんな風に何かを手伝ったり、出かけたり、メシ食って笑ったり。
それだけで十分だと思う。
一緒にいるだけで、俺は満足だぜ。おまえは?
++++あとがき++++
木村さんはさんの事好きだけど。
もっと大人な感じ?
ノリ的には
木村→すきだぜ?
宮田→すきすきだいすき愛してる!
みたいな感じ。
てか木村書きやすすぎwww
2008/03/04