みなみのしま

大晦日。

コタツに蜜柑ならぬ。コタツにアイス。
私は大好きなアイスをもそもそと口に含みながら新聞を見る。

「一歩、リモコンとって。」
「はい、どうぞ。」
「さんくー。」
はぽちぽちとボタンを変える。
一歩は変わるチャンネルをぼーっと見つめた。
「あと30分で新年かぁ・・・。」
「早かったですね。1年・・・えへへ。」
「なによ、笑っちゃって。」
「いやぁ・・・新人王トーナメントの事思い出してたんです。
色んな人と出会って・・・戦って・・・何かすっごく充実してました。」
「・・・そっか。」
満面の笑みを浮かべる一歩を見て、も微笑んだ。
そこへ、一歩の母・寛子がお盆を持って現れた
「あら、ちゃんたら・・・アイスなんか食べて。お腹壊さないでね?」
お盆の上には緑茶が入った湯のみが2つ。
1つはピンクと白の桜柄と、もう1つは渋い緑と青のグラデーションのものだ。
「ありがとう寛子ママ!」
「母さんもう遅いんだから、寝てなよ。」
「はいはい、わかりました。」
寛子は笑いながら立ち上がると「寝るときは電気全部消してね。」と言って部屋を出た。
障子がガタンと音を立ててしまる。
「おちゃがうめぇ〜。」
「おばさんみたいだよさん。」
「せからしか!」
はそう言って一歩の首を絞める。
「いたた、苦しいですよっ!!」と一歩はもだえる。

「ねー、一歩。」
「げほ、げほ・・・だんですか・・・。」
首を開放してやると、一歩はその厚みのある手のひらで己の首をさすった。
「初詣行こうぜ★」
「は?何言ってるんですか・・・急に・・・。」
「いや、そう言えば私・・・夜中に初詣行ったこと無いからさ。」
「行けない事はないですけど・・・この近くだと・・・福富八幡宮かなぁ・・・。」
「よし、じゃぁランニングがてら行こう!今すぐ行こう!!!」
一歩の手首を両手でがっしりと掴み、目を輝かせる
困ったように目を泳がせる一歩。
「うーん・・・・・・・わかりました!いいですよ!行きますから!
行きますから徐々に手首を握る力を強めないで下さい!!
笑顔でそんな血を止めるようなマネをしないで下さい!!」

***

「んー、やっぱ夜は静かだね。」
「この辺りは、お年寄りが多いから。もう皆寝てるんじゃないですか?」
コツコツと地面を鳴らすのは2人の歩みだけ。

「寒くないか?」
は隣を歩く一歩の顔を覗き込んだ。
「寒くなんかないですよ。温かい人が隣にいますから。」

「・・・・・・・・・・・・・・・おう。」

は一歩から目を逸らす。

(・・・そんな笑顔で言われたら気恥ずかしいじゃないか・・・)

ちらりと、一歩に目を向けるとにっこりと微笑まれた。

(まったく・・・可愛い家族だこった。)


++++あとがき++++

やはりお題から連想するのが好きらしい自分。
こういうセリフ、一歩君は平気で言ってくれそうだね。
裏も表もなく。素で。

2008/03/03